仙夜一夜物語

第51回「マイセンのビジネスモデル(2)」

 仙一は、元々ものづくりが好きだった。それが農業を始めた理由の一つでもあった。良いものを作り、それを人に認めてもらいたいという気持ちも、もちろんあった。
 ところが、当時の制度では、自分が作った米を自分で売れないのである。今まで色々な仕事に携わってきたが、その中でも農業は飛び抜けて不自由な商売だった。自由経済のこの日本で、米についてだけは、まるで共産圏のようにガチガチに管理されているのだ。
 鯖江市内で、米の新規販売者登録の募集があると聞かされたのは、ちょうどそんな頃だった。認可されるのはたった1件。販売者登録ができれば、仙一が目指している「ものづくりをして人に売る」ということが実現できるかもしれない。米は主食だから、よいものを作ってよいお客様とつながれば、それはきっと商売になる...そんなビジネスモデルがどんどん膨らんでいった。
 販売者登録は抽選で決まる。意気揚々と抽選会場へ行くと、なんと会場から溢れそうなくらい人でいっぱいではないか。聞くと、たった1件の募集に対し、そこに集まっていた人たちは約50名。競争相手のいない当時の米屋というのは、いい商売でもあったのだ。
 まずは、くじ引きの順番を決める予備抽選を行ったが、仙一は35番目だった。35番目までも本抽選が回ってくるだろうか...?
 抽選の方法は、昔ながらのガラガラ回す、あの抽選器である。赤玉が当たり。仙一はあまり期待することなく、35番目に並んで自分の順番を待った。なかなか当たり玉が出ない。前に並んでいた列が段々短くなり、自分の番まであと数人になった。まだ出ない。
 「これはもしかすると...」
 ついに仙一の番になった。レバーを握り、勢いよくガラガラと回す...出た!赤玉だ!! 仙一は思わず、「ありがとうございます!皆さんご苦労様でした!」と叫んだ。会場に残っていた人たちが、みんな仙一を見た。ほとんどが米に携わる業者ばかりの中で、仙一を知っている者は誰もいない。「あいつ、誰や?」皆が仙一を見交わしながらヒソヒソと話す声が聞えたが、仙一は全く気にならない。神様がきっと、「このビジネスは成功する!」と後押しをしてくれているんだと思った瞬間だった。

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