仙夜一夜物語

第72回「玄米食への道(14)」

 全国に150店舗以上を有するエステサロンの突然の倒産は大きな社会問題にもなった。なにせ、コース料金を前払方式で支払ったお客様がほとんどだったため、損害を被ったお客様が多かったからだ。同様の例として大手英会話教室Novaの倒産が記憶に新しいところだ。
 商品は問屋さんを通しての代金回収だったので金銭的な損害は無かったものの、オリジナルパッケージで商品を製造していたので大量の在庫が残ってしまう羽目になった。約1万食近い商品が在庫となった。友人知人は勿論、お客様にも出来るだけプレゼントしたがそれでも千食分近くが残ってしまった。
 幸いレトルト食品は保存期間が1年と長いため残りは自分で食べることにした。それから、毎日昼食に「玄米あずき粥」を2食ずつ食べる日々が始まった。マイセンのお粥の特徴は温めなくてもそのまま常温でも十分美味しいことだ。ナショナルブランドのお粥は、温めないとドロドロして食感もイマイチで、病人食のようだが、マイセンのお粥はしっかりお米のつぶつぶ感もあり、夏だと冷蔵庫で冷やして食べても美味しいくらいだ。
 そんな玄米あずき粥食の日々を始めて2ヶ月くらい経った頃、仙以知は自分の体重が一段と減っていることに気づいた。玄米食を始める前の体重は約86㎏程だったが、玄米食に変えてから1年ほどで70㎏程までに減っていた。それが、お昼の玄米ご飯を玄米あずき粥に変えたことで、さらに5㎏も体重が減り65㎏までになったのだ。
 玄米食に切り替えてから脂っこいものや肉類はあまり食べたくなくなったのだが、お粥に切り替えてからは更にその傾向が強まった。お昼の副食だけは会社のメンバーと一緒に給食センターの和食ものを頂いていたのだが、もうそれすらも食べたくないまでに変化したのだ。白ご飯を食べていた頃には、お肉大好き、ラーメン大好物だったのが信じられないくらいだ。
 こうした味の好みの変化と同時に、微妙な香りや色彩、自然の変化にも敏感になった。全く別人になってゆく気がした。「食べ物が人を作る」ことが本当であることを身を持って知ることになった。そして、自分の携わっている農業という仕事の使命を確信した。
「一人でも多くの人に食べ物の大切さを伝え、本当の食べ物を自分たちが生産し普及し、食する人に健康になっていただくこと」こそがマイセンの存在意義だと思うようになったのである。

 その後も、玄米粥はいくつかのデザイン変遷を経て今日も売れ続けているロングセラー商品である。そして、今後展開してゆく玄米加工食品の原点となる商品だった。

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