仙夜一夜物語

第71回「玄米食への道(13)」

「エステサロンは身体の外から施術をして、美しく痩せていただくのでしょうが、この玄米あずき粥で身体の内側からも綺麗になっていただければ効果は倍増します」
 この言葉に、ある大手エステサロンの企画担当者が乗ってくれて、面白いからテストしてみたいということになった。
 早速、三十名の男女にモニターになっていただき、玄米あずき粥を食べる他には制限を設けず、普通に生活して一ヶ月間だけ一日一食玄米あずき粥を食べていただくことにした。
 その結果、女性はもちろん男性までも、ほぼ全員が痩せた。中にはすこぶる健康になったので継続したいという人まで現れてきた。
 こうして玄米あずき粥は正式採用となり、大手が故にオリジナルのパッケージを作ることになった。大きなリスクを背負うことになるが、相手先も責任を持つとの強い要望でオリジナルパッケージに同意した。
 まず、発売に先駆けて全国店長会議でサロンの店長さん向けに説明会を開催した。東京で二回、大阪、福岡、札幌で各一回、四ヶ所で合計五回の説明会を行い、仙一の玄米に対する思いのたけを六〇分かけて語り尽くした。この大手エステサロンは全国に一五〇店舗以上を有し、店長、副店長を合わせると三〇〇名以上に説明したことになる。仙一の熱い言葉に、どの会場でも熱心にメモを取り聞き入っている姿が目立った。
 こうした準備期間を経て、いよいよ一斉に全国発売となった。お粥はまとまると重いので、お客様からご注文を受けたら直接ご自宅にお届けするというシステムになっていた。その注文を本部がまとめ、毎日ファックスでマイセンに注文が入ってくるので、毎日の売れ具合が一目でわかった。
 発売当日より、すごい数の注文が入ってきた。しかも、その数が日を追うごとに多くなってきた。一ヶ月間を締めてみたら、なんと五万食近い注文になっていた。さすがに企画担当者も驚いた様子で、「これまで化粧品類しか扱ったことがなかったけれど、一ヶ月に一万個以上売れたものはなかった。初めての食品が五万個近く売れるとはまったくびっくりしました」と嬉しい悲鳴をあげていた。
 その後、月日が経って多少売上数は減ったものの、それでも一ヶ月に二万食近くはコンスタントに売れ続けていた。
 そんなある日、何気なくお昼のNHKニュースを見ていて驚いた。なんと、そのエステサロンが倒産したのだ。仙一はビックリして、会社に電話したがつながらない。愕然とした。「好事魔多し」とはこのことだった。

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