仙夜一夜物語

第63回「玄米食への道(5)」

 玄米食を始めた仙一に、家族も一緒になって巻き込まれた。 初めは、台所には白米と玄米の二つの炊飯器が並んでおいてあったが、いつしか玄米の一台だけになっていた。
 玄米食を始める前には、文句を言っていた両親も、実際に食べ始めるとまんざらでもなさそうだった。
 当時、糖尿病の気があった父は、病院からの薬を飲んでいた。その父に、「もう病院の薬を飲むのは止めてくれ」と頼んだ。
 「俺を殺す気か?」と父は激怒したが、仙一の説得に根負けし薬の量を減らすことを約束した。 その代わり、真面目に玄米食を続けることになった。その結果、父の数値はどんどん改善していったのだった。気を良くした父も、ついに糖尿病の薬を飲むのを止めた。軽い糖尿だったとはいえ、見事に病気を克服したのだった。仙一は嬉しかった。
 「やっぱり玄米は凄い! 玄米こそは日本人が神様から頂いた贈り物だ」と確信した。もっと、もっと皆に教えてあげたかった。
 ようやく家族が玄米食に慣れ始めた頃に事件は起こった。小学生だった長男が「玄米はいやだ」と言い出したのだ。その理由を詳しく尋ねてみると...。
 学校の給食時に自宅からご飯を持ってくる日があったのだが、玄米を持参した長男が担任の先生から「色ご飯はダメです」と注意を受けたらしい。美味しいご飯と自信があった長男にはそれが大きなショックだったようだ。
 「玄米を知らない先生がいるとは!!! 」仙一は驚くと同時に、とても悔しかった。食は勉強よりも大事だと思っていたから、本気で、学校を辞めさせようとも思った。しかし、よく考えてみれば、当時の玄米に対する世間一般の認識はその程度でしかなかったのだ。
 これがきっかけで、福井が生んだ偉人、石塚左玄が提唱した「玄米正食」と「食育」をもっともっと世の中に広めなくてはいけない、と仙一は闘志を燃やすのだった。

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