仙夜一夜物語

第59回「玄米食への道(1)」

 今でこそ、「マイセン」といえば「玄米」とおっしゃってくださるお客様も多いが、仙一がマイセンを立ち上げた当初はそうではなかった。
 脱サラをして、たまたま家業である農業に目をつけたわけだが、特に無農薬にこだわりがあったわけでも、体によい玄米を売ろうと思っていたわけでもなかった。
 「たまたま」農薬にかぶれやすい体質だったから、なるべく農薬を使わない農業をしていただけだったし、玄米に至っては、仙一はそれが食べられるものであることすら、最初は知らなかったのである!
 マイセンを立ち上げて2年目のある日、仙一の友人の某社長がマイセンにやってきた。
 「牧野さんのとこの玄米をわけて欲しいんだけれども」
 そうやって訪ねて来る人はよくいるのだが、普通は精米するためのお米を玄米で買いにくることが多い。精米してしまうと酸化がすすんで美味しくなくなってしまうので、玄米で購入しておいて、食べるごとに精米するのだ。
 「どんな精米器をお使いですか?」
 仙一は、当然精米するために玄米を買うのだと思ったので、精米のときのアドバイスをしようとそう尋ねたところ、
 「いやいや、精米はしないよ。玄米のまま食べるんだ」
 その答えに、仙一はたいそう驚いたのである。
 米とは精米されたもののことを言うのであって、まさかあの茶色い米をそのまま食べることがあるなどと思ってもいなかった。玄米は食べられるものなのか??
 その社長にそう聞いたところ、社長は笑いながらこう答えてくれた。
 「玄米はとても健康によいんだよ。私はガンを患ったが、ガンには玄米を中心にした食事療法がとてもよいと聞いたから、こうやって牧野さんのところの安全な玄米を買いにきたんだ」
 仙一は、その答えにも大変おどろいた。
 玄米にガンを治してしまうような、そんな力があるのか?
 仙一はかつて医学の道を志してはいたものの、西洋医学一辺倒で、食べ物で病気を治すなんてことは、聞いたこともなかったのだ。
 自分の全く知らない世界があると思うと、好奇心がムクムクと沸いてくる。
その日から、仙一の玄米についての研究が始まったのである。(つづく)

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