仙夜一夜物語

第55回「マイセンのビジネスモデル(6)」

 仙一は元々が営業マンだったので、セールスは得意中の得意である。
 田んぼをやる傍ら、ヒマさえあれば、すぐスーツに着替えて売り込みにいった。
 米を作っている農家が直接営業に来るなんてことは、当時はまずなかったので、得意先では珍しがられたものである。
 「お前みたいなやつ初めて来たぞ!」
 農家から直接お米を仕入れるということは、企業にはおおむね好意的に迎えられた。
 これならば、もっと大きく出てもいける! という手応えを感じて、仙一は意気揚々とS社の門を叩いたのである。
 とはいえ、特にツテがあるわけでもない。トップに話をすればなんとかなるだろうと、いきなり社長室に電話をした。
 「私は福井で米を作ってる農家なんですが、御社でうちの米を使ってもらえませんか?社長に取り次いでください」
 電話に出たのは秘書だったが、紹介も何もない状態で「はいそうですか」と社長に取り次いでくれるわけもない。最初は門前払いの繰り返しだったが、仙一も諦めない。
 何度何度も諦めずに電話をするうちに、どうやら秘書も根負けをしたらしい。
 ある日いつもと同じように電話をしたら、すっかり声なじみ? になった秘書の女性が、
 「あなたにはかないませんね。ここの商事部に連絡してみてください」
 と、ある会社を紹介してくれたのである。どうやら、社長に話をしておいてくれたらしい。
 この会社は、S社の子会社で、S社レストランの仕入れ全てを担当しているとのことだった。
 ついに道が開けた!!
 なんたって、社長のお声がかりである。担当者とすぐにアポイントをとって、その子会社へ乗り込んでいったのである。(つづく)

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