仙夜一夜物語

第46回「「いのち」をつなぐ~自然乾燥への挑戦(3・完)」

 大学の研究施設や、機械メーカーなどを廻っていると、頭ごなしに「そんなのは無理だ」と否定をされてしまうこともあったが、中には面白がって話を聞いてくれたり、様々なアイディアを提供してくれる人もいた。その中の一人、あるメーカーの担当者が、「太陽熱乾燥システム」を研究している大学の先生を紹介してくれた。
 早速、話を聞きに行った。太陽光をとりいれたハウスで、空気を循環させることによって乾燥させる仕組みで、設備もさほど複雑ではなく、ランニングコストもほとんどかからない。聞けば聞くほどよい話だったが、一点、問題があるという。
 「北陸ですよね? 湿度が高い地域だと難しいかもしれません」
 乾燥とは、すなわちお米の水分含有量を減らすことなので、外気の水分が高いと、お米の水分も高くなってしまい、うまく乾燥できないというのだ。
 仙一は、過去10年分の湿度を調べた。他の地域とも比較をし、気象台にも問い合わせをした。100%大丈夫とは言い切れなかったが、なんとか先生のゴーサインが出た。さらに、研究の試作機として、設備を公開することで、費用もグンと抑えることができた。
 実際にお米を乾燥させてみると、仕上がりは上々だった。確かに、一般の火力乾燥を行うよりは、数倍の時間がかかったし、広い場所も必要だった。しかし、燃料も不要、メンテナンスにもさほど費用がかからない。そして何よりも、仕上がったお米がちゃんと生きていた。乾燥させた玄米を試しに水に浸してみると、数日後には芽が出た。
 「これなら、ずっと続けていけそうだ」
 お米を作る。いのちを保ったまま、お届けする。
 仙一が目標にしてきたことが、ようやく実現できそうだった。
 大規模に農業を行うならば、効率は大事だ。安全なものをお届けするには、なるべく農薬は使わない方がいい。でも、それだけだろうか?
 色々な考え方があるし、それらは間違いではない。ただ、仙一は農業をするにあたって、大切にしたい想いがあった。いのちを作り、いのちをいただく、それによって人間も生かせていただく...その想いは無くしたくなかった。
 マイセンを創業してから20年近い現在でも、仙一がずっと続けていることがある。それは、毎年、初めて刈り取りをするという日の早朝、田んぼに入って一人だけの儀式を行う。これから刈り取りをする稲たちへ、これから大切ないのちを摘んでしまうことへのお詫びと、そのいのちを生かす誓い、そして、感謝の言葉を伝えることである。

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