仙夜一夜物語

第43回「残留農薬検査へのこだわり(4・完)」

 農薬が残っていないという化学的な証明を頂いたことは、仙一にとって何よりの励みになった。自分がやろうとしていることが間違いでないということがわかって、安心したが、そうすると、違うことも気になってくる。
 「おれんとこの米は大丈夫だったが、よそはどうなんやろ?」
 決して金銭的な余裕があったわけでもなく、ただの知識欲にすぎなかったが、一旦考え始めると気になってたまらない。福井県以外で、通常農法を行っているお米を手に入れて、また検査に出してみた。
 すると、規制の基準値以内ではあったが、やはり残留農薬が検出された。その米を作っている農家に、農薬をやった時期を聞いてみると、収穫の30日前くらいだという。現在は、収穫間際に農薬を散布するところは少ないが、特に厳格に規制されているわけでもなかった。仙一は、収穫間際に散布した農薬は残ると考えていたから、その考えが証明されたかっこうにもなった。
 ただ、美味しい米ではあった。知り合いから、「これ美味いよ」と、もらった米だったから、検査に出さなかったら何の疑問も持たずに、美味しく食べて、それで終わりだっただろう。「美味しい=安全」では、必ずしもないということもわかった。
 それ以来、毎年、残留農薬検査を行うのがマイセンの恒例行事になった。
 検査料は、少しずつ安くはなっていったが、なかなか5項目から増やすことができなかった。それが一変したのが2008年の、いわゆる「毒ギョーザ事件」である。あれで、世の中が急変した。残留農薬に対する世間の考え方が変わり、様々な食品に対して人々が過敏に反応するようになった。それがいいか悪いかは別として、少なくともマイセンにとって良かったことは、検査料が大幅に下がったことである。
 検査機関が、雨後のタケノコのように、どんどん増えて、それと同時に検査料も、どんどん下がった。仙一が元々やりたかった2百項目でも、最初は全部で2~3千万と提示されたが、2008年以降は、なんと、わずか2百分の1の値段で出来るようになったのだ。それで、一気に項目を増やし、現在は250項目について、残留農薬検査を行っている。
 今でこそ、残留農薬検査を行っていると言っても、驚かれなくなったが、10数年前は、どちらかというと変人のように言われたものだ。「お前はあほやなぁ、そんなことして何の得になるんや?」
 別に得になるから、検査をしているわけではない。マイセンの米を食べる自分の家族、会社のメンバー、それからマイセンのお客様...。大事な人たちに、安全なものを食べてもらいたいと思うのは当たり前のことだ。
 「残留農薬検査」は、マイセンの歴史でもあり、安全に対する考え方なのである。(完)

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