仙夜一夜物語

第30回「光合成細菌との出会い(2)」

 仙一は、米どころと言われる地域を中心に全国をまわった。
特に資料があるわけではないので、農業関係者の噂話が頼りだった。農協や米屋、さらにそこから次の話を聞いて...東北地方から西日本まで、天候の影響を受けなかった地域を歩いた。
 そうすると、段々とわかってきた。
 どうやら、ポイントは肥料のようだ。有機がいいのか? 化学肥料だとどうなんだ?
 さらに調べて歩いた。
 化学肥料や有機肥料で差があるわけではなかった。有機栽培の田んぼでも病気になった田んぼがいくらでもあった。
 「肥料のやり方とタイミング、それに量だな...」
 答えが、少しずつ仙一の中で形になってきた。
 「光合成細菌」
 この言葉を初めて聞いたのは、東北のある農家でだった。その後、他の地域を回っているときも、何度かこの言葉を耳にした。天候不順の影響を受けなかった田んぼのうち、光合成細菌を使った肥料を使っている人が何人もいた。
 特に東北地方では、天候不良で稲が受粉すらしなかった地域も多かったが、その中でもちゃんと収穫できている農家があって、話を聞くと、やはり「光合成細菌」だった。
 「光合成細菌とはそんなにスゴイもんなのか???」
 様々な書物を読みあさって、光合成細菌のことを調べた。
 光合成細菌とは、今から30億~35億年前、地球上に初めて生命が誕生した時の最初の生物であり、酸素ではなく光を利用して光合成を行う。今の地球を形作ってくれた、いわば立役者だ。
 調べていくと、何種類のもの光合成細菌があるらしい。これをどうすれば農業に利用できるのか?どれが一番効果的なんだろう・・・何種類か組み合わせたらどうなるのか?どこから手に入れようか?
 わからないことばかりで、ようやくつかみかけた答えだったが、なかなか具体的にはならなかった。
 そんなときに、ある運命的な出会いがあった。
 翌年1月に、オーストラリアへ視察旅行に行ったときだ。行きの飛行機で、偶然一緒になったご夫婦がいた。夫婦でオーストラリアに観光に出かけるところで、隣の席に座っていた仙一は、長いフライト時間に色々と話をした。
 なんと、この人が光合成細菌の世界的権威だった。

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