仙夜一夜物語

第29回「光合成細菌との出会い(1)」

 大凶作というのは、農家にとっては一大事だった。その年一年間、まったく収入がなくなってしまう可能性すらあるのだ。
 みな、寄ると触ると今回の大凶作の話になった。あいつの田んぼではこうだった、ここはこうだった...当時の仙一はまだ農業初心者だったから、あまり口を挟むことなく黙って話を聞いていることが多かったが、そのうち、ふと、ある疑問を持つようになった。
 今回の大凶作は、長雨が続き記録的な冷夏となったことによる日照不足が原因だった。しかも、長雨が続くと病気が発生しやすくなる。マイセンの地区では、日照不足による不作に加えて、イモチ病が発生したことで二重に打撃を受けた。
 同じ地区で同じ環境ならば、みな不作なはずだし、病気も同じように起こるはずだ。
 ところがそうではなかった。
 「うちは幸いなんともなくてなぁ」
 と誰かが口にしていた。
 日照不足でも病気になっていない田んぼもあったし、ちゃんと例年並みの収穫ができた田んぼすらあった。
 確かに、マイセンの田んぼでもイモチの被害を受けたのは一部だったし、他の田んぼも、どうにかお客様全員に出荷できる分の収穫はあった。 
 この差はなんだろう?
 たまたまその田んぼの日当たりがよかったのか?
 使っている肥料がよかったのか?
 苗が丈夫だったのか?
 自分の田んぼだけを例にとると、被害を受けた田んぼとそうでない田んぼに、特に差はなかった。使っていた除草剤、苗、肥料...全て同じようにやっていた。イモチ病が発生した田んぼの近くにある田んぼは全滅に近かったが、それでも「全滅」ではなかった。生き残った田んぼもちゃんとあった。
  一度気になり始めると、どうしてもその理由を突き止めたくなった。
 また、マイセンを会社組織にして大きくやっていくと決めた以上、天候などに左右されない安定した収穫量の確保というのは、絶対に必要だった。
 しかし、今回の大凶作について、農業関係者や学者の、いわゆる「見解」などは多く出ていたが、理論だけでなく実際に自分の足で歩いて検証してあるものは、ほとんど見あたらなかった。
 「自分で見に行くか」
 一人で視察に出かけた。東北をはじめ、米どころと言われる地区を回り、噂を頼りに自分で探した。
 「天候の影響を受けなかった地域が他にもあるはずや。それらの共通項を探せば、何答えが見つかるに違いない!」

バックナンバー