仙夜一夜物語

第27回「平成の米騒動(2)」

 立ち上げたばかりのマイセンのことをどこで知ったか、人が押し寄せてくるほど、当時は全国的に米がなかった。毎日電話は鳴りっぱなしだったし、当時は事務所内には仙一の妻が一人きりだった上に、男手は朝早くから農作業に出てしまうから、事務所には鍵をかけてしまった。対応に手が回らないから、というよりも、困っている人を前にお断りするのがとても辛いというのが、妻の言い分だった。まさに「米騒動」で、人々も普通の状態ではなかった。
 米の流通を仕切っている農協も、なんとか少しでも米を集めようと、これまた必死だった。
 特別栽培米は直販することが認められていたので、農協に納める必要はなかったが、これを何とか手に入れようとあの手この手を繰り出してきた。
 知り合いの農家が、「米の検査だけでもさせてくれ」と食糧事務所に言われて、「検査なら...」と、米を一旦農協に納めた。そしてそのまま倉庫に鍵をかけられて米をとられてしまったのだ。
 仙一は絶対検査には出さなかった。なんといわれても頑強に拒んだ。そうすると、農協は様々なところから圧力をかけてきた。
 外食産業や個人のお客様には運送会社を使っていたが、ある日突然、運送会社が来なくなった。そして代わりに警察がやってきた。
 「食糧法違反だから、米を出荷してはいけない」
 農協が圧力をかけたのだ。
 特別栽培米のことを説明しても、なかなか言うことを聞かない。押し問答の繰り返しで、いっこうに埒があかないし、こうしている間にもお客様はマイセンの米を待っている。
 「わかった、じゃ逮捕してくれ。その代わり放送局に電話するから、カメラが来てから手錠をかけてくれ」
 何も悪いことをしていない、マイセンの米を待っているお客様に、ちゃんとした米を出荷しようとしているところを、あんたらは逮捕するんや。どっちが正しいかは、みんなに判断してもらえばいい!
 そこまで言った。こいつならやりかねないと思ったのか、警察はようやく引き下がった。
 異常な時代だった。

バックナンバー